【学】宮崎駿の企画の流儀〜ジブリの大博覧会2016で見たジブリの企画流儀とは?〜

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「生きるってなんだろう?」

宮崎駿は、ハウルの動く城をつくった後、2ヶ月ほど

広島の鞘の浦の海沿いの家に1人で暮らしていた。

 

朝起きて、飯を食い、絵を書き、また飯を食い、散歩をして、寝る。

そんな生活をしていたという。

 

目的は映画製作で疲れ切った神経を回復させる為である。

 

今日のジブリの映画からはいくつかのテーマを感じらえるが

 

それは「本来の人間が生きるとは?」

ということだ。

 

実はそういったテーマは映画をつくる企画の段階から

考えられているということを知ったのは、

先日六本木ヒルズで行われたジブリ大博覧会で

宮崎駿が書いた映画の企画書を見たときからだった。

 

その中で宮崎駿の企画が、展示されていたので

思わず、写真がとれなかったので、全文手書きでメモをした位だ。

さすがに、そのままだとまずいと思うので、かいつまんだものを

宮崎駿のもののけ姫の企画という別の記事に記載する。

 

宮崎駿の企画書のフォーマットとは?

宮崎駿の企画フォーマットは、風の谷のナウシカから、実は全く変わっていない。

基本はたて書きの数枚の原稿用紙に、手書きである。

蛇足であるが、手書きのよさというのものがよくわかる文だった、文字の筆圧にどこを強調したいのか?

伝わってくる。

 

さて本題に戻ると内容は下記の6つから構成される。

 

1.タイトル(1つor2つ記載されている)

2.配給方法(デジタルドルビー、110分など)

3.顧客層(もののけ姫の場合、小学生以上すべての人々と掲載されていた)

4.時代設定(もののけ姫の場合、室町時代)

5.企画意図(原稿用紙ページ半分から1枚ほど)

6.解説(原稿用紙4〜5ページほど)

 

この6つは基本的にナウシカの頃からほとんど

かわらないフォーマットである。

この5と6が大きなポイントだと私は思った。

 

スタジオジブリでは映画ごとに一言でいえるテーマがある。

トトロでは人間と自然の共生、火垂るの墓では命の尊厳

といったような具合である。

 

この5の企画意図と6の解説で、

実はそれらは企画の段階から説明されているのである。

 

もののけ姫の企画意図とは?

企画意図はシンプルにまとめるとこう書かかれていた。

もののけ姫(1997年)では、中世の枠組が崩壊し近世へと移行する動乱の室町時代と、21世紀に向けての動乱期と重ね合わせていかなる時代にもかわらない人間の根源を描く。と

 

そしてそれを補足するものが解説である。

解説では時代背景のポイントや主人公はどういう設定かが

記載されている後にテーマについてはこのように書かれていた。

室町は動乱の時代、戦国時代とも一所懸命な鎌倉時代とも違う
もっとあいまいで、人間と自然の区別がなく、このような時代
人々の生き方は、21世紀の混乱の時代を生きる人たちのヒントとなる
世界の問題を解決するつもりはない
山を切り自然を破壊するため、ハッピーエンドはありえない
憎悪の中にもいきるにも値するものはある
出会いや美しいもの。
かくべきは少年の少女への理解と
少女が少年に心を開いていくこと

 

生きる意図、働く意図

私が感銘を受けたのはこんな意図が構想の段階からあったのかということだ。

いま、なぜこの企画をやるのか?それが日本にどうなるのか?

これは仕事でも同じ、この意図をどの範囲まで、自分の周りなのか、日本なのか?世代なのか

考えるというのがとても大きなことだと思う。範囲が大きければ大きいほどいい

というものではない。その時の自分たちの適切な範囲である。

 

宮崎駿も実際にそうだった。天空の城ラピュタ時の企画意図は、本来のアニメーションを取り戻す。

そこからすこしずつ意図がかわってきて、もののけ姫、千と千尋(生きる力を取り戻す)、風立ちぬ

というように考える範囲が大きくなっていく。

「個人の幸せのために生きてるのかな?それには賛成できない、どう思う?」

ジブリのドキュメンタリーである砂田麻美監督作品の「愛と狂気の王国」での宮崎駿の言葉だ

 

僕は当時はわからなかったが、この企画展をみて

この言葉を個人の幸せだけではなく、人の幸せ(含めたければその中に自分も含めてもいいと思うが)

もっと大きな範囲の幸せという意図なのではないかと思った。

 

千と千尋のひとつの世界観である神道の世界観では、

西洋との神のエデン、楽園思想に対して、八百万の神々は、何かの役目があって働いている。

働かないものは役目がないからあの場所では生きていけないのだ。

 

 

この時代に対して何かをしようといきなり考えるのは難しいかもしれない。

だが、自分のいる業界、自分の周り、自分の家族、そういう小さい規模からでも

意図というものを考えるのは大事なことではないかと感じるジブリ大博覧会でした。

 

最後に、

宮崎駿の企画のどこかにはこう一文がどこかに残されている。

こんな映画をつくりたい。

 

少女はいう。

「アシタカは好きだ、だが人間を許すことはできない」

少年は答える

「それでもいい。共に生きよう」

こんな映画をつくりたい。

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